• Story 02

    同じ事務所で
    生まれたシナジー

    NEW,inc.

    代表取締役

    倉内法生さん

    PATTERN PLANNING

    代表取締役

    赤坂若菜

  • シェアオフィスといえば、複数の会社が同じ空間を共有しながら、それぞれの仕事をするのが一般的だが、私は違う形を目指している。ブランディングカンパニー「NEW,inc.」と「PATTERN PLANNING」、二つの会社は同じ屋根の下で、それぞれの案件も担当しつつ、同じプロジェクトに向き合っていることが多い。社員研修も、社員の誕生日も全員で一緒に祝う。それでも、会社は違うのだ。あるようでないこの関係性が、どのようなプロセスを経て形成されたのか。今回は、私たちが信頼しているプランナーでありライターの顔も持つ、對馬杏衣さんに私たちのことをインタビューしてもらった。

    ——— 事務所を一緒にはじめることになったきっかけはなんですか?

    倉内さん:独立して仕事が軌道に乗り始めて、法人化しようと思っていたタイミングで、事務所をどうしようか迷っていたんです。当時は社員もいなかったので、誰かに入ってもらうなら事務所はあった方がいいよなーと。年に数回、仕事を依頼してくれていた若菜ちゃんに会った時になぜかそんな話になって、一緒に事務所をシェアしない?って思いつきで誘いました(笑)。

    赤坂:そうそう!突然すぎてびっくりしたけど、私も直感で「いいかも!」と思って二つ返事でやるって言った気がする!そして私は事務所を作るなら、カフェを併設したいってお願いしたんだよね。でも、それが叶いそうな物件を探し始めて内見した時も全然乗り気じゃなかったよね、のりおさん(笑)。立地が良いということも決め手で、半ば強引に今のオフィスを契約しました。

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    オフィスをシェアするようになってからは、それぞれの仕事に奮闘する日々。昼間は打ち合わせや撮影、取材で外出し、夜遅い時間に事務所に戻り、そこから作業をするような生活。お互い顔を合わせることもなかなかないので、文字通り”シェアオフィス”だった。しかし、1年が経った頃、NEWが会社存続に関わる大きなトラブルに巻き込まれたことが転機となった。
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    ——— どんなことが転機になったのですか?

    倉内さん:トラブルのことは誰にも言えないくらい悩んでいました。もしかしたら、あっさり会社がなくなってしまうかもくらいの感じで。ある日、若菜ちゃんが仕事の相談をしてくれた時に、その流れで、実は…と打ち明けたら「そういうことはいつでも言ってよ!オフィスを一緒にやるってことは運命共同体みたいなもんなんだから。何があってものりおさんの味方だから」と言ってくれて。それがきっかけになって、色々な話をするようになりました。

    赤坂:忙しい中でもお互いの状況を話し合うようになると、仕事も垣間見られるようになりました。それと同時にキャパオーバーになっている部分も見えてきて。せっかく質の高い仕事をしているのに、いろんなことに手が回っていないことも近くで見ているが故に歯痒さを感じていました。スケジュール作成やタスク整理が急務だと感じていたので、「PA(パーソナルアシスタント)」をやるから一緒に進行管理をやろうと伝えたんです。宇宙のようなのりおさんの頭の中を分解していこうと思いました。

    倉内さん:最初はPatternの仕事内容を表面的にしか理解していなかったし、正直頼める仕事はないと思っていました。でも、NEWの仕事に対して「この人は、こういうことを考えているんじゃない?」「こんな提案はどう?」と話してくれる内容が、同じような仕事の向き合い方をしているなと感じました。それがきっかけで、一緒に仕事をしたいなと思うようになりました。

    2018年春に事務所を借りてペンキを塗っているところ。

    tailorを始めたばかりの頃。

    2020年春の集合写真。仲間が少しずつ増え始めた頃。

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    NEWが得意とする飲食店のブランディングを進めていたタイミングで、ブランドの世界観を広げていくためのコンセプトメイク、インナーブランディング、プロモーションなどの業務を一緒に考えるようになっていった。
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    ——— 実際に二社で組むようになってどうなりましたか?

    倉内さん:今までは、プロジェクトに対してNEWという”一つの目”で取り組んでいましたが、僕らとまた違った目線やアプローチが多かったので二社で取り組む強みを実感していきました。NEWはクリエイティブの力を使って、アウターブランディングしていくのが得意。Patternは、クライアントが何を考えているか、社長さんや現場のスタッフに丁寧なヒアリングを重ねて形にしていくようなインナーブランディングやマーケティングの力があることを活かしていける案件が増えていったなー。

    赤坂:私、それまでのりおさんにイベント屋さんだと思われていたから(笑)。のりおさんに、いろいろできるぞ!というところを見せなきゃって必死でした。世代やルーツも違う私たちだからこそ、それぞれ強みを活かして仕事をすることでインパクトのあるものを作っていけるようになって、クライアントが望んでいたことよりも、さらに高い成果を出せるようになりたいという気持ちが強くなりました。

    倉内さん:しっかり効果が出ることをやっていこうとすると、スピード感も大事。同じ場所で仕事に取り組む中で、仲間も増えて、ゴールに向かって密度の濃い仕事ができるようになりました。それぞれ専門性の違う社員同士のコミュニケーションが自然と増えることで成長も加速。やっていることに愛情がないと殺伐としていいものができないので感情的な部分にもいい相乗効果があったと思います。

    赤坂:よく、「別の会社なのに、どうしてそんなに一緒にうまくやっているの?」と聞かれるんです。強みや持っている武器は違うけれど、志や向かっているゴールはたぶん一緒だからだと思うんです。「クリエイティブを通じて、新しくてワクワクして幸せな人が増えることを世の中に増やす」という部分。この解釈も結構広義なので難しいんですけど、それを日常的にみんなで解釈をし続けている感じ。これは、クライアントとの関係も一緒で、目指したいことや叶えたいものがあって、それに向かってチーム編成する。もちろん受発注関係ではあるけれど、一つのチームとして取り組むことで、より感情が入ったプロジェクトになると思っています。

    (左)大阪 天満「餃子イェスタデイ」 / (右)札幌 宮の森「アトリエシエリオン」

    ——— では、それぞれの会社のメンバー同士が働きながら感じるメリットはなんですか?

    赤坂:うちは女子率が高いですが、事務所全体の男女比や年齢層のバランスが強みになっていると思います。あとはやっぱり小さな空間で、さまざまな知識や技術を持った人がコミュニケーションをとりあえることかな。クリエイティブやマーケを考える上で、おじさんの感情と、若い子の感情について議論していたりすることも日常です(笑)。いろんな価値観を知ったり認めたりしながら、優しい関係性をみんなで築こうとしている感じがあります。もう一つ、クライアントワーク以外にも自社のブランド作りに取り組んでいることです。カフェ「tailor」の運営や夜のクリエイティブスナック「+glass」、ワイン用ブドウの葉のお茶「北海道TEA」…企画やクリエイティブはNEWとPatternの仲間が一緒に作っています。私たちが掲げる“現象を作る”ということに対して、自社ブランドはPRの一つでもあるし、全てクライアントワークにも繋がっていきます。

    倉内さん:仕事上ではアウトプットすることがたくさんあるけど、僕らの仕事の真骨頂はクライアントの悩みや課題解決のために、道筋や軸となる想いを掘り起こすこと。それを活かした形で、業界版スナックのような場を作りたいと思って、月2回ほど+glassというスナックを始めました。そこでも人との出会いや、仕事のきっかけが生まれたらいいなと思います。こうやってNEWとPattern のスタッフ一人ひとりが、一緒に考えて、未来を描いていくことを楽しんでやってくれている。これも二社でやっているからこそできることですよね。

    2022年夏のパニューンの集合写真。

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    複業やフリーランス、働き方の多様化は進んでいる。そんな世の中でも珍しいスタイルを生み出した二社は、事務所を総称して「パニューン(PatternとNEWを合わせた造語)」と呼ぶようになった。
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    赤坂:これからもそれぞれの強みを磨いていきたいし、お互い刺激を与え合うことで、何歳になっても成長できると思います。とくに、私たち二人に共通しているのは“二軍を作りたくない”という想い。みんなが前線に出て活躍できるような形を続けたいと思っています。

    倉内さん:若い頃にこういう会社があったら入りたいだろうなと思える会社を作っていきたいです。あとは、愛を持って関わるみんなが幸せになる仕事をしていきたい。札幌だけにとどまらず、共感し合えるクライアントや仲間と出会えると嬉しいです。

    株式会社NEW 代表取締役 倉内法生

    大学卒業後、デザインプロダクション数社、広告代理店を経て「株式会社NEW」を設立。 インテリアデザイン・グラフィックデザイン・WEBデザイン・プロモーションなどをシームレスに一気通貫する事で強いブランドを作る事を得意とするブランディング会社。「見えるもの全てをデザイン」を掲げ、内側と外側に向けたブランディングにより、関わる人たちが豊かになる「新しく、ワクワクし、笑顔になる」現象をデザインを起点に提供する。

    ■ Instagram
    NEW,inc.:@new_inc_design
    倉内法生 :@noriok

    ■ WEB

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    CREDIT

    執筆・編集:對馬 杏衣

    撮影:&BORDER 出羽 遼介 / 鬼原 雄太

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