4年前、栗山町は次の一歩を探していた。 駅前コミュニティスペース「くりふと」のプレオープンを控え、 町の空気も、少しずつ動き始めていた頃。 栗山町の観光情報発信・関係人口づくりを担う原田さんと、 パターンプランニングの赤坂・勝野が出会ったのは、 まさにそんなタイミングでした。 そこから続いてきた歩みは、 いつの間にか「制作」という言葉だけでは語れないものに。 パンフレットを起点に、法被やツール、 さらにWEB・SNSへ。 形を変えながら広がってきた取り組みの背景を、 振り返りました。(※本記事は2025年12月時点の取材内容です。)
出会いはさかのぼること4年前。
———このプロジェクトは、どのようなきっかけで始まったのでしょうか?
原田さん:
人とのつながりの中でパターンプランニングさんを知って、2022年11月下旬に初めてミーティングをしました。
当時は、翌年1月に栗山町の駅前に「くりふと」というコミュニティスペースのプレオープンを控えていて。町としてこれから「関係人口・交流人口を増やしていきたい」という話から相談したいなと思っていた頃にご連絡したのがきっかけです。
———「関係人口」という言葉が印象的ですね。
原田さん:
正直、移住者を増やすのは簡単じゃない。でも、関係人口なら増やせるかもしれない、と思ったんです。
札幌から週末に来る人とか、ふらっと立ち寄って「今日はここで作業しようかな」っていう人がいてもいい。
知らないだけで、栗山って“立ち寄れる余地がある町”なんじゃないかって、当時すごく感じていました。
赤坂:
私たちにとっても、その言葉が新しいというか、「そういう考え方があるんだ」と思ったのを覚えています。
移住者を増やすとなると、どうしてもハードルが高い。でも、栗山町では、まず関係人口を増加させたいというお話を伺って、ワクワクした感覚がありました。札幌からも近く、新千歳空港からも好アクセス。近隣にも魅力的な町もたくさんある。いろんなことができそうだなと!
2024年1月、はじめて形になったパンフレット。2025年7月にはアップデートも行いました。
まずはパンフレット制作から
町の入口をつくる取り組み
———最初にご一緒したのは、パンフレット制作でしたよね。
原田さん:
そうですね。誰向けに作ろうかという議論も重ねていく中で、「どの世代にも栗山町に遊びに来てほしい」という気持ちが一番大きかったです。なので、家族編・若者編・大人編の三世代構成にしました。町の魅力って、人によって刺さるところが違うので、入口を複数つくりたいなと思いました。
赤坂:
最初の打ち合わせの記録を見返したら、原田さんが当時から町のために「こういうのを作りたい」とすでにしっかりイメージされていたものが本当に多くて。
パンフレットだけじゃなくて、クリアファイルやイベントで使うツールとか。
勝野:
そうですね!原田さんの中で長期的なビジョンがある中で、徐々に考えていく幅を広げてくださっているような感じがありました。一番最初のパンフレット制作の時から、きちんと計画があって、そこから一緒に伴走していくような感じがあったと思います。
原田さん:
今となっては懐かしいですね。
パターンプランニングさんには撮影もかなり時間をかけて進めてくださったのが思い出深いです。
赤坂:
自分も旅をしながら撮影をしているような感じがあり、とても楽しかったですね!2023年8月1日に家族編、8月31日に若者編、9月8日に大人編。9月21日にフード撮影と、何度も栗山町に通い、いろんな方にご協力いただいたことで撮り終えることができました。
原田さん:
撮影を重ねるうちに、こちらも緊張がほどけていくし、紹介する側としても知らなかったことがまだまだあり、新しい発見をしていく感覚がありました。
———このパンフレット制作で、特に印象に残っていることはありますか?
原田さん:
お店選びは、特に印象に残っています。
役場の視点だけで進めるのではなく、町外の人から見た意見も取り入れながら、
この町の魅力がより伝わる形を探れたことが心強かったですね。
情報を網羅するよりも、ターゲットを意識して編集することで、
伝えたい輪郭がはっきりしたパンフレットになったと思います。
勝野:
一方で、栗山町に行く機会も増える中で町全体の魅力をもっと伝えたい!という気持ちもありました。それくらい栗山町には素敵な場所がいっぱいあったんです。
けれど情報量が多すぎても読みづらくなってしまう。情報量と見やすさを両立させられる誌面構成に悩みながら進めていきました。
赤坂:
きっと校正する量やお店への確認事項も相当あったはずです。
でも原田さんをはじめ栗山町の皆さんがとにかく素早く、明るく前向きに取り組んでいただきました。みなさんと一緒に作り上げたとても思い出深いプロジェクトです。
原田さん:
校正は、数も数でしたので結構大変でしたね(笑)。
でも、あの葛藤を一緒に経験してくれた赤坂さんや勝野さんがいたのが心強かったです。
———町外の会社と連携をしながら制作を進めていくことは、確かに心強い反面不安もあったのではないでしょうか。パターンプランニングへの依頼前後で、ギャップはありましたか?
原田さん:
なかったです!思った通り、いやそれ以上でした。
コーポレートサイトを見て、集合写真も目にしていたので「きっとこんなメンバーなんだろうな」って。デザインだけではなく、企画からする会社だということもウェブサイトを見て知っていたので、わたしたちの想いを汲み取りながら素敵な雰囲気のパンフレットを作ってくれるんだろうな、という期待がありました。
赤坂:
すごく嬉しいです。
ブランディングは成果物だけじゃなくて、プロジェクトの進め方とか空気感、チームビルティングもとても大事ですよね。
勝野:
原田さんがいつも明るく楽しく会議に参加してくださったことも、私たちも楽しんでパンフレット制作に取り組めた理由の一つです。気付けばプライベートで何度も遊びに行くほど、栗山町が大好きになりました。
———完成後の周囲の反応はいかがでしたか?
原田さん:
「見栄えがいい」という声が多かったですね。
あとイベント出店用に作っていただいた法被や、手軽なサイズのリーフレットの制作もご依頼しましたが、これまた好評でした。
赤坂:
パンフレットの表紙デザインは、観光パンフレットというイメージにとらわれずに、いろんな方向性のデザインをご提案させていただきましたね!法被は、楽しいお祭りで使うものなので、パンフレットとあえて合わさずに、ユニークだけどインパクトのあるデザインを模索させていただきました。よく見ると、祭が「栗」になっているというデザインですが、気づいてくれた人もいますか?(笑)
原田さん:
結構気づいてくれる人がいるんです!法被もめちゃくちゃ好評です。イベントに出店すると「売っていないんですか?」と声を掛けられるくらいなんです。
勝野:
良かったです。私たちのデザイン提案も原田さんがすべて受け止めてくださって、いいねと前向きな言葉をかけてくださったので、どのプロジェクトも楽しく進められました。
原田さん:
やっぱり信頼関係をうまく築けたのが良かったのかもしれません。
パターンプランニングさんがご提案するものは、たとえ斬新なデザインだったとしても、きっと僕らのことを考えてくれたうえでの提案なんだろうなと思えた。それは信頼できる相手だったからだと思います。
イベント出店や物産展で、みなさんがユニフォームとして着用する法被もお手伝いさせていただきました。
関係性があるから、濃い情報になる
———その後、栗山町ではWEBやSNSでの情報発信にも取り組まれていますね。
原田さん:
はい、2025年の4月からは栗山町観光公式Instagram(@krip_kuriyama)を始めました。
パターンプランニングさんで手がけている「LAND(@land_sapporo)」も読んでいます!
やっぱり、地元の方との関係性ができているからこそ、表面的ではない濃い情報を発信できていると思います。閲覧データを見ても、フォロワー以外の方が増えていて、少しずつ町の外へ広がっている実感がありますね。
勝野:
町の人にとってはもちろんだと思いますが、週末に栗山町へドライブにいく人たちにとってもとても魅力的なInstagramですよね。
原田さん:
町内の関係者の皆さんもリポストしてくれて、それをきっかけにどんどん情報が町の外にも流れていく。「広げよう」と力まなくても、関係性があるから勝手に循環していく感じがありました。
赤坂:
すごく素敵です。私たちもLANDというメディアを昨年立ち上げましたが、自分たちが実際にお店に行って「良い」と思ったものや人のみを紹介することにこだわっています。仕事としてという側面だけではなく、この町を本気で良くしていこうという想いは私たちもすごく共感する部分があります。
原田さん:
地元にいる僕らが、直接お店に出向いて店主の方と話をする。そういった日々の積み重ねが信頼に繋がって、結果的にみんなで「この町を良くしていこうよ」という気持ちになれているんだと思います。
勝野:
たしかにお店に行く機会が増えると自然と仲良くなっていきますよね。それがたとえお仕事きっかけだったとしても。
みなさんが日々地元の方と丁寧にコミュニケーションを取っていることで、町外の私たちもすぐに楽しく飲食店のみなさんに取材をすることができました。
2025年夏にはWEBも制作。栗山町の観光情報がいつでも手元で見られるようになりました。
“わかりやすい観光地じゃない”から、面白い
———今後、栗山町をどんな場所にしていきたいですか?
原田さん:
人口は減っていますし、冬は観光客も7〜8割くらい減ってしまいます。
大きなスキー場やレジャー施設があるわけでもない。
だからこそ、個性的な飲食店や、人の魅力をしっかり打ち出していきたいです。
札幌から日帰りで来られる距離感とか、素朴な北海道の田舎町としての良さ。
いわゆる“THE観光地”ではないけれど、そこを目当てに来てくれる人に届く見せ方ができたら面白いと思っています。
勝野:
取材をする中で、栗山町のお店はみなさんアットホームな印象でした。町外の人だからと排除するのではなく受け入れてくださるやさしさもこの町の魅力ですよね。
プライベートで栗山町に遊びに来ると、取材したお店の方が声をかけてくれることもありました。
原田さん:
地元の人にも、改めて気づいてほしいですね。
「こんなお店あったんだ」「中ってこうなってるんだ」って、町内の人ほど新鮮に驚いてくれることもあると思っています。
Instagram:https://www.instagram.com/krip_kuriyama/
2025年4月より本格始動した栗山町のInstagram。町のみなさんが日々丁寧に発信をしています。
良いものを生み出すには、
全員の熱量を揃えたチーム作りが大切
———2023年のパンフレットの制作から始まり、2025年にはイベント用ののれんやテーブルクロス、クリアファイルの作成。ウェブサイトの公開など長い間一緒に歩んできている印象です。同じメンバーと歩んでみてどうでしたか?
原田さん:
このプロジェクトでは、皆さんと継続的にお仕事ができたので、栗山町をわかってくれているうえでどうしたらもっとよくしていけるだろうという話ができることにとても安心感を覚えましたし、客観的な目線ももって提案してくれるのでとても進めやすかったです。
赤坂:
やっぱりブランディングは、 自分ごととなるくらい感情移入しないと良いものって生み出せないと思うんです。
だからこそ原田さんをはじめ、栗山町の皆さんがこの町を「好きだ」という想いに深く共感し、わたしたちにできることをどんどん考えたいという気持ちになっていったのだと思います。好きの連鎖は、最終的にすごく良いものを生み出せる。私たちも心から栗山町が大好きになったし、原田さんは私たちの「好き」という感情も大事にしてくれた印象があります。
勝野:
当時まだまだ未熟だった私の気持ちも大事にしていただいた経験は、自信にもなり、とても感謝しています。頼らせていただきながら一緒に歩んでこれたのは、みなさんのおかげです。
———あとがき
時に仕事は、「発注する側」と「つくる側」という関係に分かれがち。
けれどブランディングとは一方通行で完成するものではない。
複数年にわたって積み重ねてきた取り組みが、一つずつ花咲いていく。
それは、パターンプランニングの力だけではなく、
栗山町を愛するみなさんが「もっと街をよくしたい」という熱量を持っていたから。
小さなツールひとつにも、使うシーンを想像しながら、
思いを込めて、我が子を生み出すようにクライアントと共につくっていく。
神は細部に宿るというけれど、本当にそうだと思う。
地域おこし協力隊のみなさんも連携しながら
栗山町のInstagramも日々盛り上がりを見せている。
ぜひ、チェックしながら栗山町に遊びに行ってみてくださいね。